第53話 良い違和感をつくる
服を選び、鏡の前で確認する。 「これで大丈夫」 そう思って家を出たはずなのに、 実際にその場所へ着いてみると、 「あれ、何かズレているな」 と感じることがある。 服が似合っていないわけではない。 自分
デザイナー橋本淳によるブログ。デザイン哲学、コレクション制作の裏側、ファッションへの想いを綴ります。
服を選び、鏡の前で確認する。 「これで大丈夫」 そう思って家を出たはずなのに、 実際にその場所へ着いてみると、 「あれ、何かズレているな」 と感じることがある。 服が似合っていないわけではない。 自分
僕は、才能とは何かと聞かれたとき、 「己を知ること」だと思っている。 自分に何ができるのか。 何が得意で、 何が不得意なのか。 どこまでなら通用し、 どこから先は誰かの力を借りるべきなのか。 それを客
服に悩む人の多くは、服を知らないから悩んでいるのではない。 何を基準に選べばいいのかが、分からないのだと思う。 流行っているから。 有名なブランドだから。 店員に勧められたから。 若く見えると言われた
ファッション業界にいると、 さまざまなイベントに呼ばれることがある。 展示会。 レセプション。 ブランドのローンチ。 何かの記念パーティー。 中でも、高級ホテルのホールで行われるような催しには、 独特
人生には、何度か大きな選択がある。 どこで働くのか。 誰と生きるのか。 何を続け、何をやめるのか。 その瞬間は突然やってくる。 十分に準備ができているとは限らない。 条件が揃っているとも限らない。 そ
「自信」という言葉を聞くと、 僕は働き始めた頃のことを思い出す。 人生で初めて仕事に就いたとき、 当然ながら経験は何もなかった。 何が正しいのか分からない。 仕事がどう進むのかも分からない。 自分の判
仕事をするということは、 どんな形であっても人と関わるということだ。 会社に勤める。 自分で商売をする。 営業で仕事を取る。 技術で評価される。 働き方は違っても、 完全に一人だけで仕事が完結すること
「年相応」という言葉を、よく耳にする。 洋服の話になると、特に多い。 50代の男性が、 20代向けのブランドを着るのはおかしい。 派手な服はもう似合わない。 若い頃と同じ格好をするべきではない。 そん
流行は、確かにある。 色。 シルエット。 素材。 着こなし。 ある時代には細いパンツが街を埋め、 別の時代にはワイドなシルエットが自然になる。 それは偶然ではない。 多くの人が同じ感覚を共有し、 その
人は、誰かとつながっていたい生き物だと思う。 同じ音楽を聴く。 同じ店に通う。 同じチームを応援する。 自分と同じ感覚を持つ人を見つけると、 少し安心する。 自分の選択が間違っていなかったと、 確認で
価値観は、人それぞれ違っていい。 何を美しいと思うか。 何にお金を使うか。 どんな時間を大切にするか。 何を成功と呼ぶか。 正解は一つではない。 むしろ、全員が同じ価値観を持っている方が不自然だと思う
服を選ぶとき、 いつから僕たちは、服そのものよりも そこに付いている名前を見るようになったんだろう。 胸元のロゴ。 分かりやすいアイコン。 誰もが知っているブランド名。 それは、とても便利だ。 何を着
イタリアで仕事をしていた頃の話です。 ある日、MAURIZIOに突然言われました。 「ローマで展示会がある。行こう。」 何の展示会なのかも分からないまま、一緒に向かいました。 会場に着いて最初に思った
服は、人を格好良く見せるためにあります。 でも、主役は服ではありません。 主役は、それを着る人です。 どれだけ良い服でも、誰にでも似合うわけではない。 高価だから。 有名なブランドだから。 そんな理由
服には流行があります。 細くなったり、太くなったり。 短くなったり、長くなったり。 昨日まで古いと思われていた形が、数年後には新しく見える。 ファッションは、そうやって動き続けます。 その変化を否定す
服には、 形があります。 でも本当は、 服の印象を決めているのは素材です。 同じシャツでも、 ハリのある生地なら緊張感が生まれる。 柔らかい生地なら優しく見える。 洗い込んだ生地なら自然体になる。 光
カシミア100%。SUPER120’Sのウール。 世の中には、触り心地の良い素材がたくさんあります。 店頭で服を見る時、多くの人はまず表側の生地を触ります。柔らかい。滑らか。軽い。それだけで、良い服だ
「どんな素材ですか?」 服を作っていると、よく聞かれる質問です。 もちろん説明はします。 コットン100%。 ウール100%。 何番手の糸で、高密度に織られていて…。 でも、本当はそれだけでは何も伝わ
ブランドを始めると、いろいろな情報が入ってきます。 「今年はこの形が売れている。」 「○○がこの素材を大量に買ったらしい。」 「この色が流行る。」 そんな話は毎シーズンのように耳に入ります。 もちろん
10型のサンプルから生まれたブランド。 次はいよいよ展示会です。 でも、一つだけ問題がありました。 値段です。 素材は妥協していない。 工場も妥協していない。 細かい仕様も全部やり切った。 当然、原価
帰国してからは、CARPE DIEMの代理店として、日本中の工場を回る毎日でした。 工場を探し、日本製の製品を作る。 それが僕の仕事でした。 でも、CARPE DIEMの製品は簡単に作れるものではあり
よく聞かれます。 「どうして自分のブランドを始めたんですか?」 でも実は、最初からブランドを作ろうと思っていたわけではありません。 CARPE DIEMで働くことになったきっかけも、少し不思議な流れで
CARPE DIEMでは「洗えるレザー」という革製品を作っていました。 革自体にウォッシャブル加工が施されていて、水で洗っても大きく縮まない特殊な素材です。 当時はそれだけでも十分珍しい物でした。 で
イタリアで仕事をしていた頃も本当にたくさんの素材を見ました。ヨーロッパ中から集まる生地はどれも魅力的で、毎日のように新しい発見がありました。その頃は、世界中の良い素材がイタリアに集まってくるような時代
25年くらい前の話です。 イタリアでCARPE DIEMというブランドで仕事をしていました。 ある日、デザイナーのMAURIZIOがイギリスから生地を持ち帰ってきました。 期待して広げてみると、正直が
デザインの仕事をしていると、「何を足すか」より「何を引くか」の方が難しいと感じます。 ポケットを付ける。 ステッチを増やす。 ボタンを変える。 装飾を加える。 足す事はいくらでも出来ます。 でも一つ足
「本物って何ですか?」 そう聞かれる事があります。 難しい質問です。 僕にも明確な答えはありません。 でも、一つだけ思う事があります。 本物は、自分から語らない。 以前書いた牛革のランドセルもそうでし
子供の頃の話です。 小学校に入学する時、新しいランドセルを買ってもらいました。 軽くて丈夫で、当時としては良いランドセルだったと思います。 もちろん何も疑わず使っていました。 10歳くらいの頃だったと
服の話をしていると、時々こんな事を考えます。 人は服の何を覚えているんだろう。 ブランド名なのか。 ロゴなのか。 値段なのか。 もちろん、それを覚えている事もあります。 でも自分の事を思い返してみると
ブランドを作りたいと思った事は、実はあまりありません。 服を作りたいとは思っていました。 良い素材を探したいとも思っていました。 でも「ブランドを作ろう」と考えた事は意外と少ない気がします。 ブランド
今でも忘れられない出来事があります。 20代の頃、パリのセレクトショップ「L'Eclaireur」に入社する面接を受けた時の事です。 オーナー兼バイヤーだったフランス人に、一つだけ質問されました。 「
前回、僕にとってファッションとは「My own culture」だと書きました。 その言葉を考え続けて20年以上経ちますが、最近ようやく意味が分かってきた気がします。 文化は誰かにもらうものではありま
20年以上服を作っていますが、今でも答えが出ない事があります。 「本当に良い服って何だろう。」 以前、良い生地について書きました。 素材からデザインすると言う話もしました。 時間と共に完成する服につい
デザインの仕事は、作る事だと思われています。 でも実際は、決める仕事です。 この生地にするのか。 この色にするのか。 ポケットは付けるのか。 ボタンは何ミリにするのか。 ステッチは見せるのか隠すのか。
服を作っていると、「どうすれば売れるか」と聞かれる事があります。 もちろん売れる事は大事です。 でも僕は、それより考えている事があります。 「どうすれば何度も着てもらえるか。」 服を買う瞬間なんて、人
服を作っていると、よく考える事があります。 「飽きない服って作れるんだろうか。」 もちろんどんな服でも飽きる時はあります。 でも、その"飽き"には二種類ある気がしています。 一つは流行が終わったから着
新品が一番良い。 昔は僕もそう思っていました。 でも20年以上服を作り続けてきて、その考えは少し変わりました。 服は完成した瞬間が完成ではない。 着る人が袖を通し、その人の生活の中で時間を重ねていく事
「もっと個性を出した方が良いですよ。」 デザイナーをしていると、そんな言葉を掛けてもらう事があります。 もちろん間違ってはいません。 ブランドには個性が必要です。 でも僕は、個性って無理に作る物ではな
デザイナーは常に新しい物を求められます。 新しいデザイン。 新しいディテール。 新しいシルエット。 新しい価値を生み出そうとすると、どうしても何かを足したくなる。 でも、その足し算を続けていくと、服は
街を歩いていると、たまに目を引く人がいます。 派手な服を着ている訳でもない。 高級ブランドのロゴが入っている訳でもない。 流行の服を着ている訳でもない。 でも何か格好良い。 ファッションの仕事をしてい
「一番大事なのは何ですか?」 たまに聞かれる事があります。 デザインですか? シルエットですか? 縫製ですか? もちろん全部大事です。 でも一つだけ選べと言われたら、僕は迷わず素材と答えます。 ここま
最近の生地は本当に凄いと思います。 ストレッチ、防シワ、接触冷感、吸水速乾、UVカット、昔では考えられなかった機能が当たり前のように付き、混率を見てもポリエステルやナイロンが入っているとは思えないくら
「この生地、今すごく売れていますよ」 生地屋さんへ行くと、よくこんな言葉を聞きます。 もちろん気になります。 売れていると言う事は、それだけ多くのブランドが採用していると言う事だし、価格のバランスが良
デザイナーになって20年以上経ちますが、生地を選ぶ時に最初に値段を聞いた事は殆どありません。 必ず最後です。 理由はシンプル。 値段を先に知ると、自分の判断が少しブレる気がするからです。 高いと聞けば
「毎シーズン1万種類以上の生地を見る」 自分でも良く見てるなと思います。 でも正直、1万種類見る事が目的ではありません。 僕は単純に生地を見る事が好きなんです。 生地屋さんへ行くとワクワクするし、「今
デザインをしていると「今年はオーバーサイズが流行ってる」「次は短丈だ」そんな話をよく耳にします。 もちろん流行も大事です。 でも僕は、その前に考える事があります。 この生地、どんな形が一番格好良く見え
生地屋さんへ行くと、まず生地を触る人が多いと思います。 でも僕は違います。 まず見ます。 理由は簡単、服には二つの評価があると思っているからです。 一つは自己評価、自分が好きか、着心地が良いか、鏡を見
「天然素材と化学繊維、どちらが好きですか?」よく聞かれる質問です。僕の答えは、とてもシンプルです。
「このブランドは生地が良い」。よく耳にする言葉です。ただ、その“良い生地”とは、一体何を基準にしているのでしょうか。
服を作る時、ほとんどのブランドはデザインから考えます。でも、僕は逆です。まず最初に素材を見ます。