Jun Hashimoto

# 第六話 なぜ僕は1万種類以上の生地を見るのか

「毎シーズン1万種類以上の生地を見る」

自分でも良く見てるなと思います。

でも正直、1万種類見る事が目的ではありません。

僕は単純に生地を見る事が好きなんです。

生地屋さんへ行くとワクワクするし、「今日はどんな素材に出会えるんだろう?」そんな気持ちで見ています。

でも一つだけ自分で分かっている事があります。

自分の好みには偏りがある。

だから好きな生地屋さんばかり見ていたら、選ぶ生地も似てくる。

それでは新しい発見はありません。

だから僕は、自分の好みとは全く違うジャンルの生地屋さんにも積極的に行きます。

もちろん心に響かない生地の方が圧倒的に多いし、「今日は何も無かったな」と帰る日もあります。

でもその中で稀に「えっ、こんな生地あるんだ?」と思える一枚に出会う事がある。

その瞬間がたまらなく好きなんです。

だからまた違う生地屋さんへ行く。

また見る。

また何も無い。

でも、たまに凄い出会いがある。

その繰り返しを続けていたら、気付けば毎シーズン1万種類以上の生地を見るようになっていました。

だから僕は生地を探していると言うより、出会いを探している感覚の方が近い。

採用する生地はほんの一握り。

でもその一枚に出会う為なら、残りの9,999枚を見る時間は全く無駄だとは思いません。

その積み重ねがあるからこそ、「これは違う」「これは面白い」が分かるようになる。

結局、良い生地は探して見付ける物ではなく、見続けた人だけが出会える物なのかもしれません。