Jun Hashimoto
第一話 なぜ素材からデザインするのか
服を作る時、ほとんどのブランドはデザインから考えます。
「今シーズンはこんなシルエットにしよう。」 「この形なら、この生地が合いそうだ。」 そんな順番です。
でも、僕は逆です。
まず最初に素材を見ます。
その理由は、デザイナーになる前、バイヤーとして数え切れないほどの服を見てきた経験にあります。
当時、服を見るたびに思っていたことがありました。
「この生地なら、もっとゆったり作った方が魅力が出るのに。」 逆に、「この生地なら、もう少し細身の方が映えるのに。」
そんな“あと少し”の違和感を何度も感じていました。
決して悪い服ではありません。 でも、生地とデザインが100%噛み合っていない。 その少しのズレが、服の完成度を下げているように思えたのです。
だから、自分が服を作る側になった時に決めたことがあります。
素材にデザインを合わせよう。
生地には、それぞれ性格があります。 張りがあるもの。落ち感のあるもの。柔らかいもの。硬いもの。軽いもの。重いもの。
同じパターンでも、生地が変われば全く違う服になります。
だから僕は、まず何千、何万という生地を見ることから始めます。
「この素材なら、どんな形が一番美しいだろう。」 そう考えながらデザインを組み立てていきます。
料理人が、旬の食材を見てから料理を決めるように。 素材には、その素材にしかできない表現があります。
服も同じです。
デザインが素材を引っ張るのではなく、素材がデザインを導く。 それが、僕の服作りの原点です。