Jun Hashimoto
# 第五話 生地には似合う形がある
デザインをしていると「今年はオーバーサイズが流行ってる」「次は短丈だ」そんな話をよく耳にします。
もちろん流行も大事です。
でも僕は、その前に考える事があります。
この生地、どんな形が一番格好良く見えるんだろう?
バイヤー時代、本当にたくさんの服を見てきました。
その時いつも思っていた事があります。
「この生地ならもう少し大きい方が良いのに」
逆に
「この生地なら細い方が絶対格好良いのに」
決して悪い服ではありません。
でも何かが噛み合っていない、その違和感をずっと考え続けた結果、一つの答えに辿り着きました。
生地には似合う形がある。
張りのある生地、柔らかい生地、軽い生地、重い生地、ドレープが綺麗に出る生地。
どんな生地にも個性があります。
その個性を無視してデザインを押し付けても、どこか無理をしている服になる。
逆に、その生地が一番輝く形を見付ける事ができれば、驚くほど自然に格好良く見えるんです。
最近よく、僕の服作りは料理と似ていると言っています。
料理人は市場へ行き、素材を見て考えます。
この魚なら刺身が良いのか、焼くのか、煮るのか、炒めるのか。
素材を見て一番美味しくなる料理法を選ぶ、その選択こそ料理人の腕だと思っています。
服も全く同じです。
この生地ならジャケットなのか、シャツなのか、オーバーサイズなのか、細身なのか。
素材を見て一番魅力を引き出せる形を選ぶ、その選択こそデザイナーの腕だと思っています。
だから僕はデザインを先に考えません。
生地を見て「この素材なら、この形だ」と思えた時に初めてデザインが始まります。
デザインを生地に押し付けるのではなく、生地の魅力を一番引き出せる形を探す。
もしかしたら僕はデザインをしているのではなく、生地に教えてもらっているのかもしれません。
だから今でも服作りのスタートはデザインではなく素材。
素材が決まれば形は自然と決まってくる、それが20年以上服を作り続けて辿り着いた僕なりのデザイン論です。