Jun Hashimoto

# 第七話 生地の値段は最後に聞く

デザイナーになって20年以上経ちますが、生地を選ぶ時に最初に値段を聞いた事は殆どありません。

必ず最後です。

理由はシンプル。

値段を先に知ると、自分の判断が少しブレる気がするからです。

高いと聞けば「きっと良い生地なんだろう」と思ってしまう。

逆に安いと聞けば「何か理由があるんじゃないか」と思ってしまう。

人は思っている以上に値段に影響されます。

だから僕は、まず生地を見る。

心が動くか。

触りたくなるか。

服にした時のイメージが浮かぶか。

そこまで確認して初めて値段を聞きます。

もちろん予算はあります。

「これは使いたい」と思っても、現実的に難しい生地もあります。

逆に「この値段でこのクオリティ?」と思う生地に出会う事もあります。

だからこそ、最初に値段を聞かない。

以前も書きましたが、有名メゾンが使っている生地の中にもメーター数百円の物はあります。

逆に日本で作られた生地が海外で縫製され、日本へ戻って来る頃には何倍もの価格になっている事もあります。

そう考えると、生地の値段と価値は必ずしも一致しません。

僕が見ているのは値札ではなく、その生地が持っている魅力です。

この生地で服を作ったら格好良いだろうな。

そう思えた物だけが最後まで残ります。

値段はその後の話。

素材に惚れてから現実を見る。

この順番だけは、今でも変わっていません。