Jun Hashimoto
# 第四話 生地は触る前に見る
生地屋さんへ行くと、まず生地を触る人が多いと思います。
でも僕は違います。
まず見ます。
理由は簡単、服には二つの評価があると思っているからです。
一つは自己評価、自分が好きか、着心地が良いか、鏡を見て「今日なんか良いな」と思えるか。
もう一つは他己評価。他人から見てどう映るか「その服良いね」「どこのブランド?」そんな風に思ってもらえるか。
ファッションは自己表現なので自己満足でも全然良いと思っています。
でも、せっかくなら人から褒められたいし「それ格好良いね」と言われたらやっぱり嬉しい。
僕はそこも洋服の大事な価値だと思っています。
だからこそ生地を見る時も、まず見る。
遠くから全体を眺め「あ、この生地何か良いな」と心が動いた物だけ手に取り、そこで初めて近くで見て、触って、スペックを見る。
触ってから好きになるんじゃない、見た瞬間に惹かれるかどうか。
ここを一番大事にしています。
結局、服も人も最初は見た目から入ります。
どれだけ着心地が良くても、どれだけ高機能でも、見た瞬間に何も感じなければ手に取ってもらえません。
もちろん見た目だけでは決めません。
触って、生地の厚みを確認し、ドレープを見て、ストレッチ性や耐久性も確認する。
でもスタートは必ず"見る"なんです。
そうやって最後まで残った生地は、少なくとも僕自身が見た瞬間に心を惹き付けた生地。
言い換えれば、その生地自体に人を惹き付ける力があると言う事です。
そんな素材を使えば服の魅力も自然と上がる。
僕はそう信じています。
だから今日も生地屋さんへ行ったら最初にやる事は触る事ではありません。
まず見る。
心が動いた物だけ手に取る。
この順番だけは、デザイナーになってから今まで一度も変わっていません。