Jun Hashimoto

# 第十話 素材が全てを決める

「一番大事なのは何ですか?」

たまに聞かれる事があります。

デザインですか?

シルエットですか?

縫製ですか?

もちろん全部大事です。

でも一つだけ選べと言われたら、僕は迷わず素材と答えます。

ここまで何話かに渡って素材について書いてきました。

なぜ素材からデザインするのか、良い生地とは何か、天然繊維と化学繊維、生地は触る前に見る、生地には似合う形がある、売れている生地を使わない理由、スペックで選ばない理由。

全部書いてきましたが、結局伝えたかった事は一つです。

”素材が全てを決める。”

どんなに格好良いデザインでも、素材が変われば全く違う服になります。

逆に言えば、形を変えなくても素材が変わるだけで服は全く違う表情を持ちます。

例えば同じコートでも、シャツ地で作れば軽やかになる、デニムなら無骨な表情になる、ナイロンなら機能的な印象になる。

形は同じなのに、まるで別の服に見えるくらい印象は変わる。

僕はその変化に昔から一番魅力を感じてきました。

だからデザインは出来るだけ引き算をする。

派手なデザインで個性を作るのではなく、素材そのものが持っている個性を主役にしたい。

そうすれば同じ形でも、選ぶ素材によって全く違う空気を持った服が生まれる。

僕がずっと作りたいと思っているのは、そんな服です。

だから今日も新しいデザインを探す前に生地屋さんへ行く。

素材と出会い、その素材が一番輝く形を考える。

僕の服作りは20年以上経った今でも、その繰り返しです。

そして、多分これからも変わりません。