Jun Hashimoto

51話 自分の基準を持つ

服に悩む人の多くは、服を知らないから悩んでいるのではない。 何を基準に選べばいいのかが、分からないのだと思う。 流行っているから。
有名なブランドだから。
店員に勧められたから。
若く見えると言われたから。
無難だから。 判断を他人に預けている限り、服を買うたびに迷いが生まれる。 そしてこれは、服だけの話ではない。 仕事、住む場所、人間関係、時間の使い方。 自分の基準がなければ、いつも周囲の評価や世の中の空気に振り回される。 一方で、自分の基準を持っている人は、選択が早い。 高価でも必要がなければ買わない。
無名でも価値があれば選ぶ。
流行していても自分に合わなければ取り入れない。
これまで着たことがなくても、直感が動けば試してみる。 判断の中心に、自分がいる。 ただし、自分の基準とは、好き嫌いだけで決めることではない。 自分に似合うか。
素材に価値があるか。
品質と価格が釣り合っているか。
今の時代や場所に馴染んでいるか。
清潔で知的に見えるか。
今の自分を少し良くしてくれるか。 これまで書いてきた内容は、すべてこの基準をつくるためのものだった。 素材を知るのは、値段やロゴに頼らず品質を見るため。 ロゴを考えるのは、他人の評価と商品の中身を分けるため。 流行を知るのは、流されるためではなく、今の空気を理解するため。 年齢を考えるのは、自分を制限するためではなく、現在の魅力を活かすため。 服装と仕事を考えるのは、能力を正しく相手へ伝えるため。 新しい服に挑戦するのは、自分の可能性と自信を広げるため。 すべては、自分にとって何が必要なのかを判断する力につながっている。 自分の基準ができると、買い物の失敗が減る。 クローゼットに服が増え続けることもなくなる。
他人の服装を見て焦ることも少なくなる。
毎朝、何を着ればいいか分からないという悩みも減っていく。 そして少しずつ、自分のスタイルが生まれる。 スタイルとは、いつも同じ格好をすることではない。 何を選び、何を選ばないかに、その人なりの一貫性があることだ。 その一貫性は、服装だけではなく、立ち居振る舞いや仕事の仕方にも表れる。 自分の基準を持つ人は、必要以上に主張しない。 ロゴで説明する必要もない。
流行を追い続ける必要もない。
誰かの許可を求める必要もない。 静かだが、迷いがない。 その姿は、清潔で知的に見える。
そして結果的に、オシャレに見える。 オシャレとは、たくさんの服を知っていることではない。 今の自分と、今いる場所に必要なものを、正しく選べることだと思う。 僕は服を作っている。 しかし、本当に伝えたいのは、どの服を買うべきかという答えではない。 物をどう見て、どう選び、どう自分をつくっていくか。 その基準だ。 誰かの正解を着るのではなく、
自分の基準で選んだ服を着る。 その小さな選択を積み重ねることで、
人生の迷いは少しずつ減っていく。 自分の基準ができれば、服は変わる。 服が変われば、見え方が変わる。
見え方が変われば、周囲の反応が変わる。
周囲の反応が変われば、自分の行動も変わっていく。 人生を変えるのは、服そのものではない。 服を通して手に入れた、
自分で選ぶ力なのだと思う。