Jun Hashimoto
48話 自信は、後からついてくる
「自信」という言葉を聞くと、 僕は働き始めた頃のことを思い出す。 人生で初めて仕事に就いたとき、 当然ながら経験は何もなかった。 何が正しいのか分からない。 仕事がどう進むのかも分からない。 自分の判断に、何の根拠もない。 それでも仕事をしていると、 「自分ならこうする」 「この方が良いのではないか」 「こういうものを作ってみたい」 そんな意見やアイデアが浮かんでくる。 ただ、それを口に出すことができなかった。 経験のない新人が、 こんなことを言っていいのだろうか。 間違っていたらどうしよう。 生意気だと思われないだろうか。 考えれば考えるほど、言えなくなる。 そんな悩みの中で、 僕は一つのことを思いついた。 根拠はなくてもいいから、 まず自信を持ってみよう。 正しいかどうかは分からなくても、 自信満々に言い切ってみよう。 今思えば、それは自信というより 自分に対する思い込みだったのかもしれない。 それでも、僕は自分の考えを はっきりと言葉にするようにした。 もちろん、すべてが正しかったわけではない。 間違ったこともあったし、 考えが浅かったこともあったと思う。 ただ、自分の意見を言うことで、 周囲の反応を知ることができた。 意見を求められるようになり、 少しずつ仕事を任されるようになった。 任された仕事をこなすことで経験が増え、 最初は根拠のなかった自信に、 少しずつ根拠が加わっていった。 実力がついたから自信を持てたのではない。 最初に自信があるように振る舞ったことで、 実力をつける機会を得られたのだと思う。 自信とは、 十分な経験を積んだ人だけが持てるものではない。 時には、自分を次へ進ませるために 先に持つべきものでもある。 服装にも、同じことが言える。 「こういう服は着たことがない」 「これは若い人の服だ」 「自分には派手すぎる」 そうやって、袖を通す前から 自分には似合わないと決めてしまう人は多い。 けれど、本当に似合わないかどうかは、 着てみなければ分からない。 服は、ハンガーに掛かっている状態と 人が着た状態では、まったく違う。 体型によって変わり、 表情によって変わり、 その人の動きや空気によって変わる。 だから、直感で 「袖を通してみたい」と思ったなら、 一度着てみるべきだと思う。 似合わなければ、やめればいい。 違和感があるなら、 何が合わないのかを考えればいい。 色なのか。 素材なのか。 サイズなのか。 全体の組み合わせなのか。 その経験が、自分を知ることにつながる。 最初は落ち着かない服でも、 何度か着るうちに自然になることもある。 今まで選ばなかった色が、 意外と自分の顔を明るく見せることもある。 若者向けだと思っていた形が、 合わせ方を変えることで 今の自分に馴染むこともある。 その小さな発見によって、 自分のスタイルは少しずつ広がっていく。 そして、似合う服が増えることは、 単に選択肢が増えるということではない。 自分には、これもできる。 こういう自分も悪くない。 その感覚が、自信につながる。 服を変えたからといって、 能力が突然上がるわけではない。 性格が別人になるわけでもない。 ただ、鏡に映った自分を見て 「今日は良い」と思えるだけで、 立ち方が変わる。 姿勢が変わる。 歩き方が変わる。 人と話すときの表情が変わる。 それを見た周囲の反応も変わる。 そして、その反応が さらに自分の自信を育てていく。 服装と自信は、 一方通行の関係ではない。 自信があるから服を着こなせることもあれば、 服を着ることで自信が生まれることもある。 どちらが先でもいい。 大切なのは、 自分には無理だと最初から決めつけないことだ。 自信に、最初から根拠は必要ない。 少し背伸びをして、 今までとは違う服に袖を通してみる。 その姿を、自分自身が受け入れてみる。 思い込みから始まった自信が、 行動を変え、経験を増やし、 やがて本物になっていく。 仕事でも、服でも、 最初の一歩はよく似ている。 できるようになったら始めるのではない。 まず、できると思って始めてみる。 袖を通したことのない服の中に、 まだ知らない自分がいるかもしれない。