Jun Hashimoto
47話 仕事と、見た目の力
仕事をするということは、 どんな形であっても人と関わるということだ。 会社に勤める。 自分で商売をする。 営業で仕事を取る。 技術で評価される。 働き方は違っても、 完全に一人だけで仕事が完結することはほとんどない。 誰かに依頼され、 誰かと協力し、 誰かに評価される。 仕事で最も大切なのは、もちろん実力だ。 与えられた業務を正確にこなす。 期待以上の結果を出す。 約束を守る。 責任を持つ。 そこに異論はない。 結果を出せる人間は、 正当に評価されるべきだと思う。 ただ、仕事は結果だけで判断されるわけではない。 その結果に至るまでに、 多くの人と接触する。 初対面の相手。 取引先。 上司。 部下。 同僚。 顧客。 その人たちが、 自分に対してどんな印象を持っているか。 これは、実力と同じくらい 仕事を左右することがある。 仮に、同じ能力を持つ二人がいたとする。 同じ結果を出し、 同じ条件で仕事をこなせる。 一人は、清潔感がなく、 どこか不機嫌そうで、 一緒にいるだけで相手を緊張させる。 もう一人は、清潔で、知的に見え、 言葉を交わす前から 安心感を与える。 次の仕事をどちらに頼みたいか。 答えは、それほど難しくない。 人は、能力だけではなく 一緒に仕事をしたいかどうかでも相手を選ぶ。 信頼できそうか。 話が通じそうか。 周囲に配慮できそうか。 その場を任せても大丈夫そうか。 そうした感覚は、 最初の数秒である程度決まってしまう。 まだ何も話していない段階では、 相手は自分の実力を知らない。 過去の実績も、 仕事への姿勢も、 内面にある誠実さも見えていない。 そのとき、最初に相手へ届くものが 表情であり、姿勢であり、服装だ。 服装は、その人の能力そのものではない。 しかし、能力をどう受け取ってもらえるかを 大きく左右する。 清潔で整った服装は、 この人は細部に気を配れるという印象を与える。 場に合った服装は、 相手や状況を理解できる人だと感じさせる。 知的に見える服装は、 言葉や判断にも説得力を加える。 服装は、言葉より先に 仕事への姿勢を伝えている。 反対に、どれだけ実力があっても、 服装によって損をすることはある。 だらしなく見える。 場に合っていない。 自分の見え方に無頓着である。 その印象が、 本人の能力とは関係のないところで 不安を生んでしまう。 もちろん、見た目だけで人を判断するべきではない。 実力は実力として評価されるべきだ。 ただ現実には、 人は目に見える情報から 見えない部分まで想像する。 服装が整っていれば、 仕事も丁寧なのではないかと思う。 靴が手入れされていれば、 物を大切にする人なのではないかと思う。 サイズの合った服を着ていれば、 自分を客観的に見られる人なのではないかと思う。 それが完全に正しいとは限らない。 それでも、印象は生まれる。 だから、服装を整えることは 自分を偽ることではない。 むしろ、自分の実力を 正しく受け取ってもらうための準備だと思う。 実力が一だとして、 印象がそれを一・二にも、一・五にもする。 反対に、印象が悪ければ、 本来の実力より低く見られることもある。 服装は能力をつくるものではない。 しかし、能力の伝わり方を変える。 そして仕事では、 伝わらない実力は 存在しないものに近くなることがある。 高価な服を着る必要はない。 ブランドを見せる必要もない。 大切なのは、 清潔であること。 知的に見えること。 その場に馴染んでいること。 その三つが整っていれば、 服は自分の仕事を邪魔しない。 それどころか、 自分の実力を静かに後押ししてくれる。 仕事では、何ができるかが重要だ。 同時に、 その人と仕事をしたいと思われることも重要になる。 実力は、自分の中にある。 印象は、相手の中に生まれる。 服装とは、 その二つをつなぐための 最も身近な方法なのだと思う。