Jun Hashimoto

第42話 個人の価値観

価値観は、人それぞれ違っていい。 何を美しいと思うか。
何にお金を使うか。
どんな時間を大切にするか。
何を成功と呼ぶか。 正解は一つではない。 むしろ、全員が同じ価値観を持っている方が不自然だと思う。 育った環境も違えば、経験も違う。
出会った人も、失ったものも、守りたいものも違う。 だから、価値観は千差万別であるべきだ。 ただ、価値観について考えるとき、
もう一つ大切なことがある。 それは、価値観は変わるということだ。 昔好きだったものに、今は心が動かない。
以前は必要だと思っていたものが、今は必要なくなる。 反対に、若い頃には理解できなかったものに、
ある日突然、強く惹かれることもある。 それは、感覚が鈍ったわけでも、
自分を見失ったわけでもない。 人が変化しているということだ。 過去の自分が選んだものを、
今の自分も選び続ける必要はない。 昔の価値観に忠実でいることと、
自分らしくいることは、同じではない。 僕たちは時々、過去の自分に縛られている。 自分はこういう服が好きだった。
自分はこういう人間だ。
これまでこうしてきた。 その積み重ねが、自分をつくっているのは間違いない。 でも、過去は自分を説明する材料であって、
今の自分を決めつけるものではない。 未来の価値観も、今はまだ分からない。 数年後には、今とは違うものを大切にしているかもしれない。
今は想像もしていない場所に、立っているかもしれない。 だからこそ、考えたい。 今の自分は、何を選ぶべきなのか。 流行っているものではなく、
昔から好きだったものでもなく、
誰かに良く見られるものでもない。 今、この瞬間の自分が、
本当に心を動かされるものは何なのか。 服を選ぶという行為には、
その人の現在が現れる。 色、素材、シルエット、着心地。 なぜそれを選んだのかを辿っていくと、
今の自分が何を求めているのかが少しずつ見えてくる。 安心なのか。
緊張感なのか。
自由なのか。
静けさなのか。 服は、単なる身につけるものではなく、
今の自分を確認するための道具にもなる。 ただし、その答えは簡単には見つからない。 価格が高いから正しいわけでも、
有名だから自分に合うわけでもない。 他人の評価を外し、
過去の思い込みを外し、
未来への不安も一度外す。 その上で、今の自分に問いかける。 これは、本当に自分が選びたいものなのか。 価値観とは、完成されたものではない。 今の自分が何を選ぶかによって、
少しずつ形づくられていくものだと思う。 そして、その選択の積み重ねが、
次の自分をつくっていく。 今、何を選ぶべきか。 答えは、まだ分からなくていい。 大切なのは、
誰かの答えを借りるのではなく、
自分の中にある感覚を探し続けることだ。 服を選ぶことも、
生き方を選ぶことも、
本質はそれほど変わらない。 今の自分が、今の自分のために選ぶ。 その選択に、
自分なりの理由があるか。 僕はそこに、
個人の価値観が現れると思っている。