Jun Hashimoto

第41話「ロゴを着ないという選択」

服を選ぶとき、
いつから僕たちは、服そのものよりも
そこに付いている名前を見るようになったんだろう。 胸元のロゴ。
分かりやすいアイコン。
誰もが知っているブランド名。 それは、とても便利だ。 何を着ているのか。
どんな価値観を持っているのか。
言葉にしなくても、周囲に伝えることができる。 でも僕は、時々思う。 その服を選んだのは、自分なのか。
それとも、ロゴに選ばされているのか。 もちろん、ロゴを否定したいわけではない。 ブランドが長い時間をかけて築いた信頼や歴史。
それを一つの記号で表現できることは、
素晴らしいことだと思う。 ただ、服の価値が
その記号だけで決まってしまうのは、少し寂しい。 生地に触れたときの感覚。
袖を通したときの静かな高揚感。
鏡に映った自分が、いつもより少しだけ良く見える瞬間。 本来、服の価値は
もっと個人的なものだったはずだ。 誰かに気づいてもらうためではなく、
自分自身が気づくために着る。 自分は、何が好きなのか。
どう見られたいのか。
そして、これからどう生きたいのか。 ロゴのない服は、説明してくれない。 高い服だとも、
特別な人間だとも、
成功しているとも言ってくれない。 だからこそ、着る人自身が問われる。 なぜ、この服を選んだのか。 その答えを、自分の中に持っている人は強い。 誰かに認めてもらわなくてもいい。
大きな声で主張しなくてもいい。 分かる人だけに分かればいい。 いや、本当は
誰にも分からなくてもいいのかもしれない。 自分だけが、その価値を知っていればいい。 ロゴを着ないという選択。 それは、ブランドを隠すことではない。 自分自身を、ブランドにすることだ。