Jun Hashimoto

第三十二話 値段を決めるということ

10型のサンプルから生まれたブランド。 次はいよいよ展示会です。 でも、一つだけ問題がありました。 値段です。 素材は妥協していない。 工場も妥協していない。 細かい仕様も全部やり切った。 当然、原価は高くなります。 価格を計算すると、当時のドメスティックブランドの約2倍になりました。 普通なら少し価格を下げるのかもしれません。 市場に合わせる。 他社に合わせる。 そういう考え方もあります。 でも僕は、不思議なくらい迷いませんでした。 その頃、僕はCARPE DIEMを売っていました。 CARPE DIEMは、本当に高価なブランドでした。 だから僕の服を見ても、 「CARPE DIEMの半分以下じゃない。」 その感覚しかありませんでした。 高いという感覚は、あまりなかったんです。 展示会では案の定、バイヤーさんから言われました。 「高いですね。」 でも僕は、 「そんなものですよ。」 としか答えませんでした。 強がりではありません。 その価格になる理由を、自分が一番理解していたからです。 だから値引きするつもりもありませんでした。 結果として、その価格を受け入れてもらえました。 店頭でも売れ、お客様にも少しずつ広がっていきました。 あの時に学んだことがあります。 価格は、マーケットが決めるものではない。 もちろん相場はあります。 でも最後に値段を決めるのは、自分の覚悟です。 自分が作ったものに、本当にその価値があると思えるのか。 そこが一番大切なんだと思います。 マーケットに合わせて物を作るより、 自分が納得できる物を作る。 そして、その価値を丁寧に伝える。 もし伝わらなければ、それは価格が間違っているのではなく、自分の伝え方が足りなかっただけ。 僕は今でも、そう考えています。