Jun Hashimoto
第三十話 ブランドを作るつもりはなかった
よく聞かれます。 「どうして自分のブランドを始めたんですか?」 でも実は、最初からブランドを作ろうと思っていたわけではありません。 CARPE DIEMで働くことになったきっかけも、少し不思議な流れでした。 MAURIZIOはよく言っていました。 「イタリア人は適当だから納期がめちゃくちゃなんだ。」 冗談のようですが、本人は結構本気でした。 だから一度、日本でもの作りをしてみたい。 日本の工場と仕事がしたい。 そんな相談を受けていた流れで、僕はCARPE DIEMの仕事をすることになりました。 気が付けばイタリアで三年。 本当にたくさんの経験をさせてもらいました。 でも、三年が経った頃、僕の中で一つの気持ちが大きくなっていました。 「そろそろ日本へ帰ろう。」 そして、自分の道を歩きたい。 そのことをMAURIZIOに話しました。 すると意外な返事が返ってきました。 「それなら、日本でCARPE DIEMの代理店をやってくれ。」 「それと、日本製の製品を作れる工場を探してほしい。」 せっかく日本に帰るなら、その経験を生かした方がいい。 そんな彼なりの考えだったんだと思います。 僕も、その話を受けることにしました。 帰国してからは、日本中の工場を回りました。 縫製工場。 染色工場。 編み工場。 機屋。 毎日のように現場へ行き、日本のもの作りを改めて知っていきました。 それは、とても面白い仕事でした。 でも、その仕事を続けるうちに、少しずつ別の気持ちが生まれてきたんです。 「もし、この工場で、自分だったら何を作るだろう。」 この小さな問いが、僕の人生を大きく変えることになります。 その時は、まだ気付いていませんでした。