Jun Hashimoto
第三十一話 ブランドは、並べたら生まれた。
帰国してからは、CARPE DIEMの代理店として、日本中の工場を回る毎日でした。 工場を探し、日本製の製品を作る。
それが僕の仕事でした。
でも、CARPE DIEMの製品は簡単に作れるものではありません。 素材ありきで考えられた服ばかり。
加工も独特。 パターンも独特。
仮に同じような物を作ろうとしても、出来上がるのは劣化コピーです。 それだけは嫌でした。
だったら、まずは工場の実力を知ろう。 そう考えました。
縫製はどこまで綺麗に仕上がるのか。 この工場はどんな素材が得意なのか。 細かいディテールはどこまで対応できるのか。
その確認をするために、サンプルを作ることにしました。 もちろんCARPE DIEMのコピーではありません。
昔から頭の中にあった、 「もし自分が服を作るなら。」 そんなイメージを形にしていきました。 一型。 また一型。 気が付けば10型くらいになっていました。 ある日、それを全部ラックに並べてみたんです。 その瞬間でした。 「あれ?」 「これ……売れるな。」 今でも、その時の感覚を覚えています。 ブランドを作ろうと思った瞬間ではありません。 服を並べて初めて、 一つの世界観になっていることに気付いた瞬間でした。 もちろんCARPE DIEMとは全く違う服です。 だからMAURIZIOに見せても、 「何それ?」 で終わるでしょう。 彼のブランドではありません。 僕の服だったんです。 だったら、この服をしまっておく方がもったいない。 そう思いました。 ブランドを始めよう。 そんな大きな決意はありませんでした。 ただ、目の前に並んだ服たちが、 「外へ出してくれ。」 そう言っているように見えたんです。 だから売ることにしました。 僕のブランドは、計画して生まれたわけではありません。 10着のサンプルを並べた、その日に生まれました。