Jun Hashimoto
# 第二十三話 人は何を覚えているのか
服の話をしていると、時々こんな事を考えます。
人は服の何を覚えているんだろう。
ブランド名なのか。
ロゴなのか。
値段なのか。
もちろん、それを覚えている事もあります。
でも自分の事を思い返してみると、意外と違いました。
「あのジャケットは着心地が良かった。」
「あのニットは何年も着たな。」
「あのシャツは旅によく着て行った。」
そんな記憶ばかりなんです。
思い出しているのは服ではなく、その服と過ごした時間なのかもしれません。
だから僕は、服をデザインする時も、記憶に残る物を作りたいと思っています。
派手なデザインという意味ではありません。
何年経っても、また袖を通したくなる。
ふとクローゼットから手に取ってしまう。
そんな存在です。
以前、服は時間と共に完成すると書きました。
それは生地が馴染む事だけではありません。
着る人の思い出も、その服の一部になっていくという事です。
そう考えると、服の価値は買った日では決まりません。
何年後に、どんな記憶として残っているか。
そこに本当の価値がある気がします。
人は案外、ロゴを覚えている訳ではない。
覚えているのは、その服を着ていた自分。
そして、その時間なんだと思います。