Jun Hashimoto
# 第十九話 服に正解はあるのか
20年以上服を作っていますが、今でも答えが出ない事があります。
「本当に良い服って何だろう。」
以前、良い生地について書きました。
素材からデザインすると言う話もしました。
時間と共に完成する服についても書きました。
でも、それが全ての人にとっての正解かと言われたら、そうではありません。
人それぞれ価値観があります。
着心地を一番大切にする人もいます。
見た目を優先する人もいます。
価格を重視する人もいます。
どれも間違いではありません。
だから僕は、「これが正解です。」と言う言葉をあまり使いません。
正解は人によって変わるからです。
天然素材だから良い。
ウール100%だから良い。
高価だから良い。
有名ブランドだから良い。
そんな単純な話ではありません。
以前も書いたように、僕は素材をスペックでは選びません。
その服になった時、一番魅力的に見えるかどうか。
そこを見ています。
つまり僕が探しているのは、服の正解ではなく、その服にとっての正解です。
同じ形でも素材が変われば答えは変わる。
同じ素材でも形が変われば答えは変わる。
だから服作りには、これが正しいと言える答えがありません。
難しい仕事だなと思います。
でも、その難しさがあるから面白い。
もし服作りに正解が一つしかなかったら、世の中の服は全部同じになってしまいます。
僕はこれからも迷うと思います。
悩むと思います。
でもその時間があるから、一着一着に意味が生まれる。
遠回りに見えるかもしれませんが、その積み重ねが、自分なりの答えに少しずつ近づいていくんだと思っています。