Jun Hashimoto

# 第十七話 買う理由より着る理由

服を作っていると、「どうすれば売れるか」と聞かれる事があります。

もちろん売れる事は大事です。

でも僕は、それより考えている事があります。

「どうすれば何度も着てもらえるか。」

服を買う瞬間なんて、人生の中ではほんの数分です。

でも着る時間は、その何十倍、何百倍もあります。

だから僕は、買う瞬間より、その後の時間の方が大切だと思っています。

新しいデザイン。

新しい素材。

限定品。

そういう物には確かに魅力があります。

でもそれは、買う理由になる事が多い。

本当に難しいのは、着る理由を作る事です。

朝クローゼットを開けた時。

何も考えずに手が伸びる。

旅行に行く時も持って行きたくなる。

洗濯から戻ってきたら、また着たくなる。

そんな服は、派手ではないかもしれません。

でも生活の中で必要とされている服です。

僕はそんな一着を作りたい。

その為には着心地が良くなければならない。

動きやすくなければならない。

素材が気持ち良くなければならない。

そして何より、自分らしくいられる服でなければならない。

以前、服は時間と共に完成すると書きました。

飽きない服についても書きました。

どちらも結局は同じ事なんだと思います。

着る理由がある服は、自然と着る回数が増える。

着る回数が増えると、その服には思い出が増えていく。

思い出が増えると、その服はもっと好きになる。

服は買った日から価値が下がっていく物ではありません。

着る事で価値が育っていく物です。

だから僕は、買う理由を作るより、着る理由を作りたい。

服の仕事は、買ってもらう事ではなく、また着てもらう事。

今はそう思っています。