Jun Hashimoto
# 第十五話 服は時間と共に完成する
新品が一番良い。
昔は僕もそう思っていました。
でも20年以上服を作り続けてきて、その考えは少し変わりました。
服は完成した瞬間が完成ではない。
着る人が袖を通し、その人の生活の中で時間を重ねていく事で、本当の意味で完成していく物なんじゃないかと思っています。
デニムもそう、革もそう。
新品より何年も着込んだ物の方が格好良く見える事があります。
シワが入り、色が落ち、少し擦れて、その人だけの表情になっていく。
それは古くなったのではなく、時間と言う価値が加わったと言う事です。
だから僕は服をデザインする時も、「店頭に並んだ瞬間」だけは考えていません。
一年後どう見えるか。
五年後どう育つか。
十年後でも着たいと思えるか。
そこまで考えて素材を選びます。
もちろん流行もあります。
そのシーズンだけの空気感もあります。
でも流行だけを追い掛けた服は、流行が終わると役目も終わってしまう。
僕はそれが少し寂しい。
だから出来るだけ時間に負けない服を作りたいと思っています。
以前、人が主役だと書きました、服は人を引き立てる存在であってほしい。
その考えは今も変わりません。
そして人は毎年少しずつ変わります。
年齢も変わる。
体型も変わる。
考え方も変わる。
だから服も一緒に歳を重ねられる存在であってほしい。
新品の時が100点ではなく、五年後、十年後に110点になっている。
そんな服が理想です。
最近よく、高級とは何かを考えます。
高級とは価格ではありません。
高級とは満足度だと思っています。
一万円でも毎週着たくなる服は価値があります。
十万円でも一度しか袖を通さない服なら、本当に高級なんだろうか。
値段ではなく、どれだけ長く満足できるか。
僕はそこに価値を感じます。
だから服は消耗品ではなく、人生を一緒に歩く道具であってほしい。
思い出が増え、シワが増え、その人だけの一着になっていく。
そんな服には、新品にはない魅力があります。
服は買った日が完成ではありません。
時間を重ね、人を重ね、思い出を重ねて完成していく。
今はそんな服を一番作りたいと思っています。