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素材と身体性がつなぐ衣服体験とは?junhashimoto流ものづくり論【2026】
素材と身体性という言葉を聞くと、少し難しく感じるかもしれませんが、実は「なぜこの服は無意識に手が伸びるのか?」を説明してくれる、とても実践的な概念です。私たちは毎日、布と肌が触れ合う中で、知らないうちに素材を通して身体感覚を選び取っています。
コロナ社が紹介する身体性の定義によれば、知能や行動は頭だけでなく、身体と環境の相互作用から生まれます。この視点を服づくりに移すと、素材は単なるスペックではなく、身体と世界をつなぐインターフェースになります。junhashimotoでも、カイハラデニムやEDWIN「JERSEYS」のような素材との出会いを、ブランドのストーリーとパターン設計に落とし込んできました。
本記事では、まず身体性の基本概念を整理し、次にファッションにおける素材と身体性の関係を分解して解説します。そのうえで、カイハラデニムやjh×EDWIN JERSEYS、テキスタイルアートの事例を交えながら、素材選びとパターン設計がどのように身体感覚をデザインするのかを掘り下げます。最後には、2026年のワードローブづくりに活かせるチェックポイントもまとめます。
素材と身体性とは何か?基礎から整理する

身体性というキーワードが示すもの
結論から言うと、身体性とは「頭だけでなく身体がつくる知性」です。コロナ社による解説では、知能・認知・行動は身体と切り離せないとされ、受動歩行ロボットのように、単純な物理構造と重力だけで「歩行」らしさが生まれる例が紹介されています。ここで重要なのは、プログラムよりもまず身体と環境の関係が振る舞いを形づくるという点です。
この視点を日常に引き寄せると、椅子の座り心地や靴の履き心地、ペンの書き味など、あらゆるデザインが身体性に依存していることが見えてきます。身体は常に素材に触れ、押し返され、制限され、時に解放される。その積み重ねが私たちの判断や好みをつくるため、「なんとなく心地よい」「理由は説明できないが落ち着く」といった感覚も、身体性の働きといえます。
- 身体性=身体と環境の相互作用から生まれる知性・行動
- 椅子や靴、服の「なんとなく良い/悪い」は身体性の評価
- 素材は身体にとって最初の「環境」になる
「素材と身体性」がファッションで意味すること
ファッションで素材と身体性を語るとき、焦点になるのは「この生地が、動きや姿勢、心地よさにどう影響するか」です。九州産業大学の彫刻研究でも、鉄の焼成色や重量感が身体の感覚と結びつき、空間体験を変えると指摘されています。服も同様に、オンスや伸縮性、表面の起毛具合が、歩き方や立ち姿、さらには気分まで変えてしまう力を持っています。
つまり、素材は単にスペック表に書かれた数字ではなく、身体のふるまいをデザインする「見えない設計図」です。同じシルエットでも、ノンストレッチのヘビーオンスとハイパーストレッチでは、足さばきも姿勢もまるで別物になる。素材と身体性を理解することは、「なぜこの一本だけ、ついヘビロテしてしまうのか?」を言語化する作業ともいえます。
- 素材は身体のふるまいを左右する「見えない設計図」
- 重量・硬さ・伸縮性が姿勢や歩き方、気分まで変える
- 同じパターンでも素材次第で別の服になる
junhashimotoが体現する「素材と身体性」のものづくり
カイハラデニム×イージータックパンツの身体設計
結論から言えば、カイハラデニムを使ったイージータックパンツは、ヘビーオンスでも身体が気持ちよく動けるよう設計された矛盾解消のプロダクトです。13オンスという厚みは、色落ちのコントラストが美しく出る一方、通常は足運びを重くしがちな素材。しかしjunhashimotoは、あえてこのノンストレッチ・ヘビーオンスを選び、「楽に履けるがなんだか決まる」独自のパターンに乗せることで、新しい身体感覚を提案しています。
ここで鍵になるのが、数年かけて磨き上げたイージータックパンツのパターンです。ウエスト周りにゆとりを持たせながら、膝から裾にかけて綺麗に落ちるシルエットにより、重さを感じにくく、視覚的には脚が長く見える。身体性の観点から言えば、「布の重さ」と「空気を含む余白」をバランスさせた設計で、素材の物質感を保ちつつ、動きのストレスを最小限に抑えています。
- 13オンスのカイハラデニム×イージータックで矛盾を解消
- 重さと余白のバランス設計が脚さばきと見た目を両立
- ノンストレッチだからこその育てる楽しさと身体感覚
EDWIN JERSEYSと「誰でもサマになる」身体感覚
jh×EDWINのJERSEYSコラボは、ストレッチ素材と身体性の可能性を最大限引き出したケーススタディです。JERSEYSは異常なほどの横伸びを誇る素材で、本来なら「ジャージ的」なラフさに振れがち。しかし橋本自身は、素材のストーリーがEDWINのものであることを重視し、安易にLEEやWRANGLERの看板を借りるのではなく、あえてEDWINとのタッグを選択しました。これは、素材とブランドストーリーを身体性の一部として尊重した判断だと言えます。
パターン面では、股上をやや深くしつつ腰から膝まではタイトに設計し、膝下をあえてストレート気味にすることで、下品にならない「ケツ履き」からジャストウエストまで幅広い身体にフィットするよう調整。結果として、「これ以外で飛行機に乗れない」と言われるほど長時間着用でも疲れにくい、身体性に優れたデニムが生まれました。ここでは、赤タブや503由来のステッチなど、触れたときに感じるディテールも、身体と素材の関係を豊かにしています。
- JERSEYSの伸縮性を活かしつつ「ジャージ感」をデザインで抑制
- 股上・膝・裾のバランスで多様な履き方に対応する身体性
- ブランドストーリーも身体体験の一部として尊重
アートと書に見る素材と身体性の拡張
書の「身体性・時間性・自然性」と服の共通点
中嶋宏行氏がnoteで論じるように、書には身体性・時間性・自然性という三つの特質があります。筆を持つ手の速度や圧、呼吸のリズムが、線の太さやかすれとして紙に刻まれ、それが一度きりの時間経験として残る。ここでは、墨・紙・筆という素材が、身体の動きを余すことなく可視化する媒体になっています。
服もまた、同じように時間とともに身体性を刻むメディアです。デニムのヒゲやハチノスは、歩幅や膝の曲げ方、ポケットに手を入れる癖といった無数の身体動作のアーカイブと言えます。素材と身体性をアートの視点で見れば、私たちが毎日着続けることで、服の表面に「自分だけの書」を描いているとも言えるのです。
- 書は身体の動きと時間を素材に刻む芸術
- デニムのアタリも日常動作の「書」として読める
- 墨=染料/紙=生地/筆=身体という対応関係
彫刻・テキスタイルアートが示す空間的身体性
九州産業大学の研究シーズでは、現代彫刻において、鉄の焼成色や重量感を身体性と結びつけ、特定の空間を表現する試みが紹介されています。重い鉄や人工素材が放つ物質感は、見る者の身体に「近寄りがたさ」や「安心感」といった感覚を喚起します。これは、素材そのものが空間の中で身体の位置や動きを規定する典型例です。
Instagramで紹介されている「テキスタイルの箱舟」展でも、触覚と身体性をめぐるテキスタイル作品が、視覚だけでなく触覚を通じて「いま、ここ」の感覚を呼び起こすと説明されています。服づくりで言えば、生地の立ち方や風をはらむ分量、肌に触れたときの温度感が、空間の中で自分の身体をどう感じるかを左右するということ。アートの事例は、ファッションを「動く彫刻」「歩くインスタレーション」としてデザインするヒントになります。
- 素材の重量・質感が身体の位置感覚を変える
- テキスタイルアートは触覚を軸に「いま、ここ」を体験させる
- 服もまた空間の中で身体を演出する可動式の彫刻
「素材と身体性」を意識した服選び・ワードローブ設計
日常で実践できるチェックポイント
結論として、服を選ぶときは「タグ」と「鏡」のあいだに身体感覚のチェックを挟むことが重要です。素材表示やスペックだけで判断せず、実際に歩く・座る・腕を上げるなど、身体を動かして確かめる。コロナ社が述べるように、知性や判断は身体との相互作用から生まれるため、試着はまさに「身体性による意思決定プロセス」と言えます。
具体的には、次の4点を意識してみてください。
・歩いたときの太もも周りのストレス
・座ったときのウエストと腰骨の当たり
・腕を前に出したときの肩周りの突っ張り
・呼吸したときの胸とお腹の締め付け感
これらはどれも、数値では表せないが、毎日の疲労感や快適さを左右する要素です。
- タグ情報だけでなく「歩く・座る・伸びる」で判断する
- 太もも・ウエスト・肩・呼吸の4ポイントをチェック
- 身体性のチェックは長く愛用できる服の条件になる
2026年ワードローブを組むうえでの戦略
2026年のワードローブを考えるなら、素材と身体性を軸に、「育てる服」と「即戦力の快適服」をバランスよく組み合わせるのがおすすめです。前者にはカイハラの13オンスデニムのように、履き込みと洗いを重ねて自分の身体動作を刻み込めるもの。後者にはJERSEYSのようなストレッチ性に優れたパンツや、くたびれにくいカットソーなど、長時間着ても疲れにくいアイテムを配置します。
その際、単に「楽かどうか」だけで判断せず、楽なのに姿勢が崩れないかもチェックするとよいでしょう。股上の深さや膝下のラインが身体をどの位置に導くかで、同じストレッチでも印象は大きく変わります。junhashimotoの事例が示すように、ストレッチ素材ほどパターン次第で身体性の差が出やすい。素材と設計が噛み合った服こそ、毎日つい手が伸びる「スタメン」になります。
- 「育てる服」と「即戦力の快適服」を両方持つ
- 楽さだけでなく「楽でも姿勢が崩れないか」を基準に
- ストレッチ素材はパターン設計で身体性の差が出る
ブランド哲学としての素材と身体性:ストーリーをまとう
海外信仰より「ストーリーと身体体験」を選ぶ判断軸
橋本淳はEDWINとのコラボに際して、LEE/WRANGLERの名を借りるよりも、JERSEYSという素材のストーリーを尊重する道を選びました。これは、「海外ブランドだからカッコいい」という安易なイメージではなく、実際の素材の良さと、それが生み出す身体体験を評価軸にしたということです。ブランドタグよりも、履いたときの動きやすさ、長時間フライトでも疲れない快適さを重視する姿勢は、まさに素材と身体性を核にしたものづくり哲学です。
さらに、赤タブや503由来のステッチといったディテールにもこだわり、EDWINというブランドの歴史とユーザーの身体感覚を結びつけています。これは、服を通じて「どんな物語をまとうか」という選択でもあります。私たち消費者も、ロゴやトレンドだけでなく、そのブランドがどんな身体性を提案しているかに目を向けると、買い物の質が一段変わります。
- 素材の実力と身体体験をブランド選びの基準にする
- ストーリーはタグだけでなくディテールや着心地に宿る
- ブランド哲学=提案される身体性のスタイル
「一度履くと戻れない」体験が示すリピートの理由
jh×EDWIN JERSEYSは、「これ以外で飛行機に乗れない」と言われたり、撮影用に貸し出したパンツが個人用に全色買い取られたりと、印象的なエピソードに事欠きません。これらは単なるマーケティング文句ではなく、身体性に強く訴えかける製品が、自然とリピートを生むことを示す好例です。一度「疲れにくさ」「動きやすさ」「スタイルの出やすさ」を身体で覚えてしまうと、他のパンツには戻れなくなるのです。
この「戻れなさ」は、スペック比較や価格差を超えた領域の話です。厚手のカイハラデニムが、履き込むほどに自分の足の動きに沿って柔らかくなり、色落ちも含めて唯一無二の相棒になっていく過程も同じ。素材と身体性が深く結びついたとき、服は消費財から「長期的な関係を結ぶ道具」に変わります。これこそが、ものづくり側にとっても、ユーザー側にとっても、最も健全で持続的な関係性だと考えています。
- 強い身体体験はスペックや価格を超えて記憶に残る
- 「戻れない」感覚はリピート購入の根本理由になる
- 素材と身体性が結びつくと、服は長期的な相棒になる
まとめ
素材と身体性を軸にファッションやアートの事例を見てきましたが、共通していたのは、数字では測れない身体感覚こそが体験の質を決めるという点です。カイハラデニムのヘビーオンスを活かすパターン設計や、EDWIN JERSEYSのストレッチ性を品良くまとめるバランス感覚は、その最たる例でした。2026年のワードローブづくりでは、タグの情報だけでなく「歩く・座る・呼吸する」自分の身体に問いかけながら、素材と身体性が噛み合う一着を選んでみてください。
要点
- ✓
身体性とは、身体と環境(素材)の相互作用から生まれる知性と行動である - ✓
素材はスペックではなく、動き・姿勢・気分をデザインする「見えない設計図」 - ✓
カイハラデニムやJERSEYSの事例は、パターン設計が身体性を左右することを示す - ✓
アートや書の事例から、服も「身体の書」や「動く彫刻」として読み解ける - ✓
ワードローブ構築では「育てる服」と「快適な即戦力」を身体感覚で選ぶことが重要
次に服を選ぶときは、ぜひ鏡の前で数分かけて「歩く・座る・伸びる」を試し、素材と身体性の相性を自分の身体で確かめてみてください。そのうえで、カイハラデニムやjh×EDWIN JERSEYSのように、長く付き合える一本を軸にしたワードローブを組んでいきましょう。
よくある質問
Q1. 素材と身体性を意識すると、具体的に何が変わりますか?
最も大きく変わるのは「失敗買い」が減ることです。タグの素材表示やトレンドだけでなく、実際の動きやすさ・疲れにくさを基準に選ぶようになるため、クローゼットの中で眠る服が減り、着用頻度の高い「スタメン」が増えます。結果的にコストパフォーマンスも高まり、ワードローブの満足度が上がります。
Q2. オンライン購入でも素材と身体性を見極めるコツはありますか?
完全に試着の代わりにはなりませんが、オンスやストレッチ混率、レビューの「硬い/柔らかい」「軽い/重い」といった表現を手がかりに、自分が得意な素材レンジを把握しておくと精度が上がります。また、同じブランド内で持っている一着と素材構成やシルエットを比較することで、身体性の近さを推測しやすくなります。
Q3. ヘビーオンスのデニムは身体に負担ではないですか?
確かに厚みのあるノンストレッチデニムは最初は硬く感じますが、パターン設計が良ければ、重さをうまく分散させ、動きの要所に余白をつくることでストレスを軽減できます。カイハラ13オンス×イージータックパンツのように、「育てる過程も含めて心地よくなる」設計がされているかどうかがポイントです。
Q4. ストレッチ素材は身体性の観点で常に優れていますか?
ストレッチ=常に正解ではありません。伸びすぎる生地をルーズなパターンに乗せると、楽な反面、姿勢が崩れやすく、長期的には身体にも見た目にもマイナスになることがあります。JERSEYSの例のように、伸びる素材ほどパターンで「どこまで許容し、どこで止めるか」を設計しているかが重要です。
Q5. ブランドのストーリーは本当に着心地に影響しますか?
直接的に生地の伸縮性が変わるわけではありませんが、ストーリーを大切にするブランドほど、素材選びやパターン設計にも一貫した哲学が通っていることが多く、結果として身体性のクオリティが高まりやすいです。EDWINのJERSEYSストーリーを尊重したjhのコラボのように、物語と身体体験が揃うと、愛着とリピート率が大きく変わります。